誹謗中傷・名誉毀損における被害届・告訴の手続き
はじめに
SNSや掲示板などで執拗な誹謗中傷や名誉毀損を受けた場合、被害者としては警察に相談し、刑事事件として処罰を求めたいと考えることもあるでしょう。名誉毀損罪や侮辱罪などは立派な犯罪に該当する行為であり、状況によっては刑事告訴や被害届の提出が可能です。
しかし「警察に行けばすぐに捜査してもらえるのか」「告訴状と被害届の違いは何か」といった疑問や、実際にどう準備を進めればよいのか戸惑う方も多いと思います。本稿では、誹謗中傷・名誉毀損に関する刑事手続きを進めるうえで知っておくべきポイントとして、被害届・告訴状の意味や違い、作成方法、提出後の流れなどを解説します。
被害を受けた場合にスムーズに捜査を進めてもらうには、証拠の保全や手続き上の注意が欠かせません。お早めに弁護士へ相談することで、無駄のない手続きが可能になりますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
Q&A
Q1:被害届と告訴状はどう違うのですか?
- 被害届:犯罪被害を警察に知らせる文書や申し出
- 告訴状:犯罪行為を捜査機関に訴え、犯人の処罰を求める正式な意思表示
名誉毀損罪は親告罪なので、告訴がないと起訴できない原則があります。被害届よりも告訴状のほうが正式度・証拠書類の整備が求められるイメージです。
Q2:名誉毀損で警察は本当に動いてくれるのでしょうか?
ケースバイケースです。悪質性や被害の重大性、証拠の明確さなどによって捜査の積極度が変わります。特にネットの誹謗中傷では、発信者特定が困難な場合があり、警察が消極的になることもあります。弁護士に相談し、必要な証拠を整理することで捜査が進む可能性を高められます。
Q3:告訴状を出したら必ず起訴されますか?
必ずしも起訴されるわけではありません。告訴状が受理され捜査が行われても、証拠不十分などの理由で不起訴になるケースもあります。とはいえ、告訴がなければ起訴できない(親告罪)という性質上、告訴状が持つ意味は非常に大きいです。
Q4:被害届や告訴状を弁護士に作成してもらうメリットは?
法的要件に合致した形で事実を整理し、証拠を適切に添付できるため、警察や検察に真剣に捜査してもらいやすくなります。自分で作成すると、事実や証拠が不十分で受理されないリスクが高まります。
Q5:告訴と同時に民事の損害賠償請求をしたい場合、どうすれば?
刑事手続きと民事手続きは別で進行しますが、並行して進めることも可能です。まず告訴状を出す一方で、弁護士に発信者情報開示請求や削除依頼、損害賠償請求の準備を依頼しておくとスムーズです。
解説
名誉毀損罪は「親告罪」
名誉毀損罪(刑法230条)は原則として親告罪に分類されます。親告罪とは、被害者や利害関係者の告訴がなければ公訴(起訴)が行われない犯罪を指します。つまり、被害者が「処罰を求めます」と明確に意思表示をしないと、検察は加害者を起訴できないのです。
- 親告罪である理由
プライバシーや名誉に関わる問題は、被害者本人が公開を望まない場合もあるため、被害者の意思を尊重する仕組みが設けられています。 - 例外
死者に対する名誉毀損は一部非親告罪扱いになる場合がありますが、基本的には告訴がなければ捜査は進みにくいです。
被害届と告訴状の違い
被害届
- 「自分(または自社)が犯罪被害に遭った」ことを警察に申告する行為
- 処罰を強く求めるかどうかよりも、「まず事件として認識してほしい」という段階
- 警察は被害届を受理したからといって必ず捜査を行う義務はありません
告訴状
- 「犯人を処罰してほしい」という被害者の正式な意思表示
- 親告罪の場合、告訴状がないと検察は公訴提起できない
- 告訴状は書式や証拠の添付などがより厳密に求められる
被害届・告訴の手続きの流れ
証拠の収集・整理
- 誹謗中傷のスクリーンショットやURL、投稿日時、加害者を特定できる情報などをまとめる
- 弁護士へ相談して、どの程度の証拠があれば捜査に進んでもらえる可能性があるかを検討
警察への相談(被害届・告訴状の準備)
- まずは最寄りの警察署やサイバー犯罪相談窓口などで状況を相談
- 必要に応じて告訴状の作成に着手し、弁護士が内容を確認する
提出と受理
- 被害届・告訴状を提出しても、警察が必ず受理するとは限らない
- 証拠不十分と判断されたり、事件性が低いと見なされたりする場合は受理を拒否されることもある
捜査開始
- 受理されれば警察が捜査を開始(発信者特定、関係者への聞き取り等)
- 事件として送検され、検察による最終判断(起訴・不起訴)が下される
不起訴の場合
- 証拠不十分や被害者と加害者の示談成立などが理由で不起訴となる場合がある
- 不起訴になっても、民事の損害賠償請求を行う余地は残る
よくある問題点と対策
警察が動いてくれない
- 特にネット上の名誉毀損は「立証が難しい」と判断され、警察が消極的になることも多い
- 弁護士とともに証拠を十分に整え、加害者特定の見込みがあることを示す必要がある
匿名投稿者の特定
- プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求を経ないと、加害者がわからない場合が多い
- この手続きは被害者自身では困難が多く、弁護士が代理で進めるのが一般的
時間との勝負
- インターネット上のログは一定期間で消去されることが多い
- 早めの相談が、重要な証拠を確保する鍵
弁護士に相談するメリット
告訴状や被害届の作成サポート
- 法的に必要なポイントを押さえた記載ができ、警察が動きやすい形で提出可能
- 被害の重大性や具体的な証拠を整理して提示し、受理をされやすくする
発信者情報開示請求との併用
- ネット上の誹謗中傷は、先に発信者情報開示請求で加害者を特定しておくと、刑事手続きのスムーズな進行につながる
- 弁護士が同時並行で開示請求を進め、証拠固めを行うことで捜査機関との連携を強化
示談交渉や民事手続きへの移行
- 捜査の途中で加害者が謝罪や示談を希望する場合、弁護士を通じた交渉が円滑
- 民事訴訟に移行した場合も、同じ弁護士が継続してサポートできるメリット
精神的負担の軽減
- 被害者本人が警察対応を一手に担うと、手間やストレスが大きい
- 弁護士が窓口となり、書面作成・提出、捜査機関との連絡を代行することで負担を軽減
まとめ
誹謗中傷や名誉毀損で刑事事件としての手続きを取るには、まず警察への被害届提出か、もしくは親告罪である名誉毀損罪に対する「告訴状」提出が要となります。被害届は「被害を知らせる行為」、告訴状は「処罰を求める正式な申立て」という位置づけであり、告訴がなければ検察が起訴できないのが原則です。
しかし、ネット上の犯罪は証拠収集や発信者特定の段階でつまずくケースが多く、警察が動かない・捜査が進まないといった声も少なくありません。そこで、専門家である弁護士に相談して適切な手続きを踏むことで、スピーディーかつ確実に被害回復を図ることができます。
ポイント
- 証拠の確保:スクリーンショット、ログ、投稿日時、URLなど
- 加害者特定:必要に応じてプロバイダ責任制限法に基づく開示請求
- 警察への相談:被害届・告訴状を準備し、受理を目指す
- 捜査結果:起訴か不起訴か、示談が成立するかなどケースバイケース
- 民事訴訟との連携:慰謝料・損害賠償請求を並行して検討
もし誹謗中傷・名誉毀損の被害に直面している場合は、お早めに弁護士法人長瀬総合法律事務所へご相談することもご検討ください。証拠の保全や告訴状作成、警察対応のアドバイスなど、一連の手続きをトータルでサポートいたします。
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